2023年

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2017年より6シーズン続いた辻発彦監督体制に終止符が打たれ、2023シーズン、指揮は松井稼頭央監督に引き継がれた。松井監督は、現役時代の2018年から兼任コーチとして辻監督(当時)らコーチングスタッフと多くの行動を共にしながらチーム作りを学んでおり、引退後の2019年から3年間は二軍監督としてファームを指揮、2022年はヘッドコーチとして再び前監督の下で“一軍”としてのチーム作り、采配のノウハウを学んできただけに、最善の後継者と言えよう。実際、辻前監督も「稼頭央なら大丈夫」と、太鼓判を押してのバトンタッチとなった。

新指揮官に託されたのは、2018年、2019年のリーグ連覇を経験した熟練選手たちと、自身が二軍監督として3年間指導してきた成長著しい若手選手たちとを融合させた、“新生ライオンズ”による新たな時代の開拓だ。スローガンに『走魂』を掲げ、「走ることにこだわりを持って、相手から見て『ライオンズの野球は隙がない』と思われるようなチーム(松井監督)」作りを目指したが、その船出は決して順風満帆とはいかなかった。

3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場した源田壮亮が、大会中に右手小指を骨折。完治を最優先とし戦列を離れたため、守備の要であり、キャプテンとしてチームの精神的支柱でもある存在を開幕戦から欠くという苦境からのスタートとなってしまう。就任時から松井監督がレギュラー当確を明言していた三選手の中でも、最も信頼を置く選手だっただけに、痛恨と言わざるをえなかった。それでも松井監督は「それもチーム。その状況の中でみんながどうカバーし合い、補っていくかが大事」と、一言もネガティヴな言葉を発しなかったのである。

そして実際、主力の不在で巡ってきたチャンスをしっかりと生かしたのがルーキーの児玉亮涼だった。『社会人野球ナンバーワン遊撃手』の評判通り、安定感抜群の守備で瞬く間に首脳陣・チームメイトたちの信頼を勝ち取ると、開幕直後からレギュラーに定着。源田不在の穴をほとんど感じさせない堅守で、チームに漂っていた不安を払拭してみせた。
また、6月末には『ライオンズアカデミー』出身の大卒ルーキー蛭間拓哉がデビューを果たし、喜怒哀楽を全面に出したプレーでチームを活気づけた。
同じ大卒ルーキーの青山美夏人も、そのポテンシャルへの期待値の大きさから、開幕戦から1点リードの9回表に抑えとして起用された。結果として、その試合は同点打を浴びて期待には応えられなかったものの、2日後の同カードで9回表を無失点に抑え、リベンジを達成。
児玉、蛭間、青山とも一年目から一軍レベルでの強みと課題を見つけられたことは、個人としてはもちろん、新たな未来を築いていくチームにとっても非常に大きな収穫となった。

中堅選手たちの奮闘も印象的だった。1年半ぶりにライオンズに戻ってきた佐藤龍世は、「後悔がないように」と、一年通して試合前、試合後に室内で打撃マシンで打ち込みを行った努力が開花。シーズン通して一軍に帯同し、特に9月からはレギュラーとして起用され、すべての成績でキャリアハイの成績を記録した。
7年目の田村伊知郎の躍進も目覚ましかった。前半戦こそファームで過ごす時間が多かったが、二軍戦では絶対的守護神として15セーブを記録。その経験を生かし、後半戦は一軍でも投げるごとに信頼を勝ち取っていくと、終盤は勝ちパターンの一角で起用され、6ホールド1セーブの成績を残した。「今後、自分がどうやって戦っていくかの、一つの“形”ができました」。自信を得た田村のさらなる成長に注目だ。

高卒3年目で念願の支配下登録を掴み取った豆田泰志もまた、飛躍を遂げた。7月26日に一軍昇格を果たすと、投げっぷりの良さを武器に猛アピール。自身4試合目の登板で初ホールドをあげると、最終戦では「いずれは経験させたかった」との松井監督の強い希望もあり、リードでの9回マウンドを任され、初セーブを記録。21歳右腕にとってかけがえのない経験となった。

こうして、新たな戦力が台頭した一方で、際立っていたのが先発投手陣の充実ぶりである。
3年連続3回目の開幕投手を任された高橋光成は、リーグ最多の4完投、防御率リーグ2位(2.21)を誇り、そのマウンド姿にはエースの風格が漂っていた。
さらに圧巻だったのが平良海馬だ。昨季までの中継ぎエースが、先発への転向を直談判し注目を集めたが、初挑戦にして規定投球回数到達、チームトップの11勝、防御率2.40(リーグ4位)を記録し、能力の高さを証明してみせた。
加えて、規定投球回にこそ届かなかったが、今井達也が自身初の二桁勝利(10勝、防御率2.30)、隅田知一郎が9勝(防御率3.44)と、それぞれキャリアハイの数字を残し、来季以降のさらなる飛躍を予感させた。
中継ぎに専念した2年目左腕・佐藤隼輔の着実なる成長なども含め、チーム防御率は12球団中2位を誇る。辻前監督のころから目指してきた『投手王国』は、いよいよ本格的に築かれつつあるようだ。

その充実した投手陣をいかにリードするか。今季は正捕手争いもチームの大きなみどころの1つだった。社会人時代からの豊富な経験を誇る4年目の柘植世那、2年目の古賀悠斗に加え、4月に育成から支配下登録された2年目の古市尊も名乗りをあげたなか、ひとつ頭が抜けたのは古賀だった。100試合出場中90試合で先発マスクを被り、投手一人ひとりとともに勝敗1つ1つの責任を負った。リード面に加え、盗塁阻止率リーグトップの4割1分2厘を記録し、投手を大いに救った。その頼もしさに、今井らも「本当にどんどん成長している」と全幅の信頼を口にしている。ただ、古賀本人は「正捕手とはまったく思っていない」とキッパリ。何よりもチームが5位に沈んだこと、また、2022年はリーグトップであったチーム防御率を2位に下げてしまったことについての悔しさ、反省の方が強いと唇を噛んだ。
とはいえ、2023年11月に行われた『2023アジア プロ野球チャンピオンシップ』では、今井、隅田、佐藤隼とともに日本代表に選出され、優勝に貢献。球界でも注目されている存在であることは間違いない。一歩リードした正捕手の座を磐石なものにできるか。立居振る舞い含め、来季の古賀にはより一層注目したい。

結果として、松井ライオンズ一年目は5位に沈んだが、指揮官はチームの着実なる成長を確信している。「ベテランや中堅選手ももちろん、今年得た経験をもとに成長を遂げている若い選手もいます。僕も含め、選手たちにとっても、来年が勝負だなと思っています。選手たちには期待しかありません!」

とはいえ、5位という成績に納得している者など誰一人としていないことは言うまでもない。味わった悔しさを糧に一人ひとりがより高い意識で己を磨き、2024年こそ、“新時代”の象徴として5年ぶりのリーグ優勝、日本一の悲願達成を成し遂げたい。

文・上岡真里江

スローガン

走魂

取得タイトル

ゴールデン・グラブ賞

遊撃手部門

源田 壮亮

大樹生命月間MVP賞

3・4月度

中村 剛也

7月度

今井 達也

主力選手成績

投手

選手名 防御率 試合 セーブ ホールド 完投 完封 投球回 失点
高橋光成 2.21 23 10 8 0 0 4 2 155 47
與座海人 3.69 15 2 6 0 0 1 1 83 38
隅田知一郎 3.44 22 9 10 0 0 2 1 131 52
平井克典 2.55 54 4 3 0 28 0 0 53 15
平良海馬 2.4 23 11 7 0 0 0 0 150 47

打者

選手名 打率 試合 打数 得点 安打 二塁打 三塁打 本塁打 打点 盗塁
外崎修汰 0.26 136 503 60 131 28 3 12 54 26
渡部健人 0.214 57 209 17 41 13 0 6 25 2
蛭間拓哉 0.232 56 198 17 46 6 0 2 20 0
佐藤龍世 0.263 91 209 27 55 9 3 3 16 2
鈴木将平 0.24 72 242 19 58 8 2 0 15 10

順位

順位 チーム
優勝 オリックス 143 86 53 4 0.619 -
2位 千葉ロッテ 143 70 68 5 0.507 15.5
3位 福岡
ソフトバンク
143 71 69 3 0.507 15.5
4位 楽天 143 70 71 2 0.496 17.0
5位 埼玉西武 143 65 77 1 0.458 22.5
6位 北海道日本ハム 143 60 82 1 0.423 27.5

ユニフォーム

Laviewユニフォーム

Laviewユニフォーム 見本画像

1969年の西武秩父線誕生以来から西武鉄道の象徴であり続ける西武特急とチームスローガンである「走魂」を掲げて戦った2023シーズンのライオンズの想いが交差する。新型特急"Laview"をモチーフとしたユニフォームを身に纏い、選手たちが走攻守すべてにおいて、特急さながらのスピード感あふれるプレーで、チームを勝利へと導くために戦い抜いた。

蒼空ユニフォーム

蒼空ユニフォーム 見本画像

黄金時代を想起させるライオンズブルーを基調とし、「突き抜けろ。蒼く、強く、高く。」をコンセプトとしたユニフォーム。夏の蒼空を表現したライオンズブルーの下地には、飛行機雲をイメージしたピンストライプを、1979年以降西武ライオンズとして初めて採用した。いくつもの栄光を積み重ねてきた特別な色を全身に身にまとい、夏を戦うライオンズを魅せた。